境界性と依存 639
4日
マキさんが実家に泊まると言うので真っ直ぐ帰宅した。
久しぶりに母と夕食を摂る。
食事はここ数日よりはまともだったが唐揚げが生だった。
私「母さん、少し生っぽいな(笑)少しチンしようや」
母「あ、ホントや‥。ゴメンゴメン」
私「母さんも一口飲んだら?」
いつぶりだろうか母とビールを飲んだのは‥。
ときおりおかしくなる母を見ながら数年過ごしてきたが、今は切ない‥。
置いていけるわけない‥。
しかし一緒に住めるのか‥
無理だろう‥。母は家からは出ないだろう。
近くにアパートを借りて私が見に行くしかないか。
6日は休みだから姉と相談してみようと思う。
母は嬉しそうにいつもの昔話を私に聞かせる。
でも体調は良くない。私にはわかるのだ。
私「母さん、老眼進んだやろ?見えてるんか?」
母「右眼がおかしいね。老眼とは違うと思うけど」
私「眼科行こうや」
母「姉ちゃんと行ってきたよ。目の奥のデキモノが目を圧迫してるんやって。危なくて手術は出来ないから放っておくしかないんやって」
私「は?そんなこと聞いてないよ」
母「あんた毎日遅いし、朝早いし(笑)」
私「LINEくらい出来るやろ?姉ちゃんだって‥」
母「あんた、私はもういいから自分の老後の心配しなさい。来月43やよ。何も残すどころか金食い虫でゴメンね」
私「またそんな話か?俺は病気の話を教えて貰えてないのがショックやわ」
母「私はもう一人でいいんや!」
母が皿を弾いた。唐揚げがテーブルから落ちた。
私「何しとるんや?」
母「目もダメ、頭もダメ、お腹もダメ。もう人間じゃないんやわ。今にまあちゃんもわからんくなって親でもなくなる‥。まあちゃん私から逃げなさい」
私「母さん、大丈夫やって!俺はずっと息子や」
母は泣きながら唐揚げを拾った。
母はどれだけ悔しいんだろう。
私「母さん、大丈夫やから落ち着けや。親父がダメな分だけ俺が支えてきたつもりやし、これからもそう」
風呂に入り悩む‥。
キッチンを電化にしないと危ないな‥。
布団に入ってから貯蓄を確認する。
私「何が出来るんだ‥」
母と過ごして、母が逝けば自分だけなら何とでも生活出来るんと思い生きてきた。
適当に遊ぶことも出来た。
これからはマキさんとピノ子を守らなければ。
「キッツイなぁ」
正直、マキさんにも少しは働いて貰わなければ成り立たない。
母が逝き、ピノ子が落ち着いたらマキさんは働いてくれるだろうか?
一度話し合いしなければ‥
そのまま寝落ちした。