境界性と依存 544
眠ったマキさんに毛布をかけてアパートを出た。
合鍵はない。
カギを閉めて郵便受けに入れる。
私は不倫している男が愛人宅から帰る時、こんな気持ちになるのかな?と思った。
家に着いたのは2時だったがビールを飲みながら通帳を見た。
再婚など眼中に無かった私は離婚以来、自分の老後の蓄えくらいしか考えてこなかった。
少なからず貯金はしていたが‥
「やっぱりキツイな‥」
マキさんにお金で寂しい思いはさせたくない。
しかし母の治療には必ずお金がかかる。
父は他人と同じ。いや、他人より悪いのだ。
こんな内情を知って、マキさんの両親が反対しないわけはない。
私なら反対する。
母の病状から、あと2、3年‥。
それまで耐えられるか?
若いマキさんが子育てしながら耐えてくれるだろうか?
結論は‥。
私は最低な人間だということ。