境界性と依存 679
アパートに着くと母親は車の助手席でマキさんが着替えを持って来るのを待っていた。
母親「何か用ですか?」
私「用と言うよりお話がしたいです」
アパートに入ると母親は玄関に座り込み話なんてしたくないという態度を取った。
私「常務に呼ばれてマキさんとの事を問われました。あなた何がしたいのですか?別れさせたいだけなら私に直接言えばいい」
私はあえて「あなた」と呼んだ。「お母さんなんて呼ぶ気にならなかった。
母親「結婚するならそれでいいです。常務さんは何て?」
私「お客さんを騙して妊娠させたと言われました。そんな話が広まれば私は仕事を失います」
母親「あなたは私の大事な娘を騙して妊娠させたんだから当たり前でしょ?第一、住むところすら与えてないじゃない」
私「探してますよ、あなた方が家を買うという話を聞いたのでアパートも近くの方がいいと思って何処の家を買うのか聞いてくるようにマキさんにも言ってます」
母親「別に遠くていいです。余計な御世話です。家だって買わないと思います。それどころじゃないから。大事な娘のことで一杯一杯。認知してもらえるかもわからない。出産費用もない、子供用品買うお金もない。あなた私に何か恨みでもあるんですか?私があなたに何かしましたか?教えて下さい」
私「いえ、恨みなんてありませんよ。大体、誰のどんな情報でそんな話になってるのかわからないんです。私はマキさんに商品を買わせたことなんてありませんよ」
母親「あんたが我が家を無茶苦茶にしたのは確か!私は仕事にすら手がつかない。もちろん収入は減る。どうしてくれるんですか?」
私「私はマキさんと協力して子供を育てる話をしてる。あなたの生活をどうこうする話とは違います」
私はマキさんに部屋から出るように言った。
母親「娘がいたらダメな話ですか?騙してるから」
私「私はこんな話をお腹の子供に聞かせたくないだけです。きっと聞いてますから」
母親「いいんじゃないですか?聞かせたら。父親に騙されて出来た子だって」
私はマキさんに再び部屋から出るように言った。
私「マキさん、もう言いやろ?全部言うよ。これ以上放って置いたら会社に居られなくなる」
マキさん「全部って?」
私「俺らが出会ったキッカケから全部。常務に間違った情報が入ったら俺は全部を常務に話さなきゃいけなくなる」
マキさんは顔色が変わり手が震えだした。
母親「まだ私に言えない事があるんですね。隠して騙して娘をこんな目にあわせて」
マキさんの様子が気になり
私「マキさん外に出なさい」
だがマキさんは動かない。いや動けないのだ。
相当母親の反応が怖いのがわかる。
私「明日、2人で話しませんか?マキさんがおかしい」
母親「じゃあ今日はおかえりください」
私「少しだけ2人で話したいので車で待ってて下さい」
母親「また騙すんですか?」
マキさん「そんなんじゃないから行ってて」
母親は呆れた表情で出て行った。